七宝焼と言ってもいろいろあり、おおきく分けて
メタル七宝 ガラス胎七宝 泥七宝 透胎七宝 本七宝
の5種類でしょうか。
kimito商品には基本的にメタル七宝という種類を使用しています。
それぞれの技法にそれぞれの難しさ、面白さがありますが個人的な意見としては「メタル七宝」が一番自由度が高くいろいろな事ができる技法だと、好んで使用しています。
そして現在、私が一個人の作家として取り組んでいる作品の技法の種類が「本七宝」。
これは中国から日本へ七宝焼が伝わって来た時の大本の技法と言われていて、その他の技法はこの「本七宝」から派生したものです。では、「メタル七宝」と「本七宝」はなにが違うのかというと、ユウヤクの硬さが違います。
メタル七宝のユウヤクは基本的に平面作品に使用するため平均すると柔らかく、本七宝のユウヤクは立体作品に使用するため硬く、溶けにくく作られています。立体作品で柔らかいユウヤクを使用すると溶けるのが早く、垂れてしまったりしがちなんですね。
後はユウヤクが硬いという事は、磨ぎ仕上げにも向いています。
焼き上がった作品の凹凸をなくす為にダイヤモンドのやすり6種類ほどを使用して、番数を細かくしていって光らせていくのですが、硬い分ガシガシと遠慮なく磨ぐことができます。
ちなみに磨ぎ仕上げとは、磨いで終わった物。
焼き仕上げは、焼いて終わった物です。
合理的な違いはこんな感じでしょうか。
メタル七宝のユウヤクより格段手間がかかるし、神経も使う、手を抜くとすぐにばれるという、やっかいな技法ですが、長く歴史に残っているもの、伝わっている物はやはりいいものだと実感できた技法です。
残していきたい、私もいつか誰かに伝えられたらいいなと願わずにはいられません。美しいんですもん。
前置きがすさまじく長くなりましたが、制作途中の「本七宝」作品をちらっとご紹介します。
梨地の白っぽいものがベースとなるユウヤク。銅板の胎に焼き付け終わった状態です。このベースを焼くのも本七宝は一苦労。説明するとまたながーくなってしまうので、メタルユウヤクの苦労を1としたら、本七宝は10くらいでしょうか。10倍難しく、手間がかかります。梨地なのにも意味が有り、一緒に写り込んでいる銀線をこれから接着していくのに、着きがいいのです。
つるんとしてるとすべっちゃいます。
さてやっとタイトルの「植線」にたどり着きました!
長かった、、、。
ここまで呼んでくださっている方、いるのかしら。
植毛的なノリで植線です。純銀の線を植えていきます。
この銀線(種類はいろいろありますが幅0,1mmの高さ1,2mm程です)をピンセットでちまちまと自然のゆる~い接着剤で着けていきます。
普段は下絵やデザイン画を書かない私ですが、この銀線を立てる作業となると話は別で、進める順番を決める為に下絵を描き、ある程度の完成図を思い描いています。
どこから線を立てるか。植線の順番を間違えると時間のロスが生まれてしまうので慎重になります。
この、銀線をぴしっと綺麗に立てられるようになる迄2、3年かかりました。
微妙なチカラ加減が難しいのです!
線の美しさを魅せるのが、「有線七宝」。
金属線を使用した作品の総称です。
今年の秋頃には完成する予定おりますので、この写真のブツがどうなるのか行く末に興味を持ってくださった方は気長にお待ちください!